カッサンドラは警告する

2011-05-29 18:39


「ソロスは警告する」(G.ソロス著・徳川家広訳・講談社)という本を読みました。
カッサンドラの立場の意味がわかったのでまとめます。


人物紹介


カッサンドラは、ギリシャ悲劇に出てくる悲劇の美少女です。王女様なのに、戦争のせいでPTSD(心的外傷後ストレス障害)になってしまいました。
しかし、彼女の不幸はPTSDだけではありません。
カッサンドラは神様公認の完璧な予言者であるにもかかわらず、誰も彼女の予言を信じないのです。

ジョージ・ソロスは、大成功した投機家です。若い頃は哲学者志望だったものの、学校の成績が悪くてなれなかったとのことです。
しかし、彼が編み出した「再帰性」の哲学は、相場を張るときにずいぶん役立ったそうです。
まだ生きています。(1930年~)


再帰性とは


ソロスによれば、社会現象は「再帰性」で表現できます。
再帰性は、人間が世界を扱う2つの機能が、互いに影響し合うことにより生まれます。


このフィードバックが無数に繰り返される世界では、固定された予想を得ることは不可能です。


キャラ設定がストーリーを生む


さて、カッサンドラは完璧な予言者なのに、どうして予言を聞いてもらえないのでしょうか?
それは、人々が予言を聞いた途端に現実を修正してしまうからです。

予言を聞いてもらえるVer.

カッサンドラ「畑のスイカが盗まれるわ!」

じい「見張りを立てましょう」

衛兵「報告します。誰も盗みに来ませんでした」

カッサンドラ「ギャフン」


予言を聞いてもらえないVer.

カッサンドラ「(独白)きっとスイカは盗まれるのだわ……」

じい「(独白)また何か妄想していらっしゃる……」

衛兵「(独白)無為を恥じることなかれ……だ。俺の立場からすれば、無為は誇るべきだとも言える。だが」

カッサンドラ「(独り狂喜して)ほーら、盗まれた……! 盗まれたわ……!」


完璧な予言者が成立するためには、予言が世界に影響を与えてはいけません。ソロス流に言えば、完璧な予言には認知機能と操作機能の分断が必要なのです。
つまり「予言を聞いてもらえない」のは、「完璧な予言者」というキャラ設定を曲げなかったことの代償です。

でも、予言が無視される予言者に、いったい何の意味があるというのでしょうか。
社会現象に関する限り、「完璧な予言者」というのは美しくも無意味な考えのようです。
美しいあやまちを表現しているので、カッサンドラは悲劇のヒロインとして優れているのだと気づきました。






コメント


木村智恵子   2011-05-30 20:53
Website: 予言の哲学

はじめまして。

質問です。

ソロスは「再帰性」の見方の徹底(?)によって 投機に成功したのですか?

哲学者になりたかった彼の哲学が知りたいです。良ければ教えて下さい。カッサンドラの話はとても面白いと思いました。ありがとうございました。


石川晋一郎   2011-05-31 23:24
Website: ここ

「再帰性」の要点は、上にまとめたものがほとんど全てです。
著書では「認知機能=関数F1(x)と、操作機能=関数F2(x)があると思いねえ」式の説明をしているのですが、関数の中身が定義できないことはソロス自身認めています。
世界の中で世界関数を書くのは、やっぱり無理でしょう。

相場師としてのソロスは、投資対象の価格変動をファッションのブームのように考えているようです。
つまり、売れる=価格が上がるかどうかは、評判重視の女子トークで決まります。
ところで、ファッションで商売するならブームの終わりを予想することが大切です。
同様に、投資対象のバブル化と、バブル崩壊の時期を予想してネタを仕込むのがソロスの流儀です。
実務家としてはさておき、哲学者としてのソロスは「妥当な価格など無い。すべての価格形成はバブルである」と主張しているのだと思います。

私の小さなコメントを付け加えると、こんな感じでしょうか……。
「価格の妥当性を論じることができるのは、経済のうち儲からない部分。儲かる部分の価格形成は大部分がバブル。」
儲からない部分とは、具体的には最低賃金や牛丼戦争のことです。


石川晋一郎   2011-07-28 19:54
Website: ここ

ソロスのヘッジファンドが、顧客の資金を全て返却するそうです。
今後はソロス自身の資産だけを運用する基金になるとのこと。
しばらくは、自由な取引が規制される世の中になりそうです。

【ロイター】投資家ソロス氏、自身のヘッジファンド外部資金を返還へ
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-22374720110726


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